Q:昨年あなたが『サンセット大通り』に出演を決め、ミュージカルの世界にカムバックしたことは大きなニュースとなりました。そもそもこのプロジェクトの出発点はどのようなものだったのですか?そして作品への出演を決めた理由は何ですか?
Sarah(以下、S):これまでにもたくさんミュージカルの役でオファーを受けてきましたが、どれも断ってきました。というのも、ミュージカルの形式があまり自分の好みではないのと、私の声のタイプやスタイルがその枠に合わないと思っていたからです。でも、今回ノーマ・デズモンド役をやってほしいと言われて、これは演技の要素が強い役だなと思いすごく興味が湧きました。『サンセット大通り』はご存知の方も多いと思いますが、ちょっとサスペンスっぽい心理劇で、フィルム・ノワール的な作品です。ただこれまで1度もオペラ風に演じられたことがなくて、ソプラノの私が演じたら面白いんじゃないかと思いました。また、私自身、演技は大好きだけど、ここまでしっかり演じる機会も経験も今までなかったんです。だから、これは自分にとって大きなチャレンジになると思い引き受けました。確かに大変でしたが、自分なりの表現を見つけられたと自負しています。私が演じる『サンセット大通り』は、これまでのどのヴァージョンとも違うし、演出も私のアプローチも全然違います。1つの実験でしたが、素晴らしい経験となって私のアーティストとしての裾野を広げてくれたと思っています。
Q:実際ミュージカルの舞台に久しぶりに立ったことでどんな感覚を得ましたか?何か新しい発見や普段行っているコンサートとの違いがあれば伺いたいです。
S:1番の違いはストーリーテリングの部分です。コンサートではどうしても限界があるんです。私は幸いにも、たくさんの世界的ヒット曲や素敵な音楽に恵まれました。でも、それらは私の人生の様々な時期を語る歌なので、1つの流れにまとめようとするのが、実はなかなか難しい。たとえば『ハレム』や『ラ・ルーナ』などのアルバムをリリースした時は、そのアルバムのストーリーをテーマにしたコンサートを構成して、過去のヒット曲を織り交ぜる形になるわけですが、そこで伝えられる物語にはどうしても限りがあります。一方で『サンセット大通り』のような舞台作品には、魅力的なストーリーがあります。ある種の心理スリラーとでも言いましょうか。人生のちょっと奇妙な時期にいる2人が出会い、そこで描かれる物語には多くの人が自分の人生のある時点と重ねて、大いに共感できるはずだと思えました。だからこそ役を引き受けたんです。
Q:今年はシンガポールや中国での『サンセット大通り』への出演、この後は7月の来日ツアーや台湾でのショーが控えています。長期のツアーは慣れていらっしゃると想像しますが、アジアにこれほど長期間滞在するのは初のことかと思います。長い時間を過ごす中で、何かアジアならではの過ごし方があれば教えてください。
S:正直、こうしたことを長く続けるためには、十分な休息をとって、運動をし、食事や健康に気を配るなど、体調管理には本当に気を使わなければならなくて…。しかも舞台の合間には、アメリカで2年おきに行っているクリスマスツアーもあったので。違うことを並行してやっていたんです。そんな風にとにかくずっと忙しかったので、アジアならではの過ごし方をじっくり探る時間はあまりなかったかも。毎日、自分のアーティスト活動にとにかく意識を集中しているんです。
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