MR.BIG/ミスター・ビッグ

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  • MR.BIG 来日記念 リレー連載(不定期)「MR.BIGと私」第四弾
    2017.08.10
    早いもので、来日公演はいよいよ一ヶ月後、そして当連載企画も第四弾を迎えました。 今回ご登場いただくのはNHKの制作局エンターテイメント番組部に所属する是洞(これとう)茂樹さんです。詳しくは末尾のプロフィールをご覧いただくとして、2009年にバンドが再結成した際に、同局の音楽番組「MUSIC JAPAN OVERSEAS」に出演したのですが、是洞さんはその番組スタッフとしてMR.BIGの新たなスタートを世の中に知らしめる大きな手助けをしてくださいました。当時、番組をご覧になった方もたくさんいらっしゃると思いますが、TV番組スタッフとして関わったMR.BIGはどういったものだったのか?その姿が少しだけ垣間見える文章を寄せていただきました。
    ①「MR. BIGと私」の始まり
    1989年、当時21歳だった私が、14インチテレビで「Addicted To That Rush」のプロモビデオを見た時の衝撃は強烈だった。それが「MR. BIGと私」の始まりだ。番組は「ミュージック・トマト」か「SONY MUSIC TV」か関西ローカルの「POPベティ・ハウス」だったかは覚えていない。でも、このビデオを初めて見た時の驚きは忘れない。イントロでこりゃ凄いと。何だこれは、と。イントロだけではない。ソロも凄い。ポール・ギルバートとビリー・シーン。二人の超絶プレーヤーのアンサンブルに、まだ若かった私は完全にノックアウトされた。いや、年齢は関係ない。このあと、40代になった私は再び彼らにやられてしまうのだから。
    80年代末といえば、日本で言うところの「LAメタル」ブームも落ち着いてきた時分。RATTのウォーレンは「Reach For The Sky」でブルース的なフレーズに傾倒したり、ブルージーさがウリのシンデレラが流行ったり、 GUNS N' ROSESのようなちょっと泥くさいHRが出てきたり。テクニックや派手さ(当時の言葉でいえば、フラッシーさ)よりも味わいとかグルーブ感が重視されてき出したなあ、と何となく感じていた矢先。とんでもなくテクニカルで端正なプレイなのに、ワクワクさせるようなノリのよさ、バンド的な盛り上がり。テレビの前の私は「これだ!」と実に胸がすく思いをしたのです。
    ②100% PAUL GILBERT
    1991年、「YOUNG GUITAR」別冊「100%RATT」や「100% ジョージ・リンチ」に続いて「100% PAUL GILBERT」が発売された。人気ギタリストにスポットを当て、奏法やスコアなどを集中的に掲載するギタリスト御用達の参考書的ムック本だ。ファンの方ならば持ってる人も多いかと思います。かじる程度にギターを弾いていた私はそこに載っていた「Addicted To That Rush」にチャレンジしてみた。イントロ・リフのフィンガリングの体感スピードは信じられないぐらいに速く、しかも弦移動や開放弦が多過ぎて余計な弦が鳴りまくる。時おりピッキング・ハーモニクスのような小技もきかせている。続くタッピングをあんな具合に弾くのは無理だ。「自分には何の参考にもならない…」というのが結論で、常人にはまったく歯が立たないギタープレイの凄さにこの時あらためて気がついたのでした。当然のことだけど。
    ③1997年 ポップジャム
    以上が私個人のMR. BIGとの出会いでしたが、その後、NHKに入局してから幸運にもメンバーの皆さんに二度、お会いすることが出来た。身に余る光栄だ。一度目は1997年4月12日放送の「ポップジャム」のディレクターをつとめた時。ベスト盤『BIG BIGGER BIGGEST』リリース後のタイミングで、NHKホールで「Stay Together」を収録。ELTや黒夢、MAXの皆さん、知念里奈さんと一緒の回だ。当時の上司は邦楽アーティストには詳しくても、洋楽はそれほど分からない感じだったので、彼らに出演してもらうために内部で話を通すのが意外に大変だった。なかば上司をだますような形でOKにして、迎えた当日。MR. BIGがやって来るということは特別感以上に特別なことだった。セットはクイーンのような豪華照明セット。曲の最後には紅白歌合戦のラストのようなテープを客席に向けて打ち、盛り上げた。メンバーの皆さんにはこれら演出をとても喜んでいただいた。ファン、いや、ディレクター冥利に尽きる。インタビューは司会の森口博子さんとホールの地下楽屋で収録。そこにはギター、ベースとアンプを用意した。レコード会社から「機材は小さいもので、何でもいい」と言われていたこともあり、高校生が持ってるぐらいの小型アンプに、エフェクターなしのダイレクトインだったかと思う。「テクニカルなプレイを」というこちらのリクエストに対し、ポールとビリーで実に鋭いカッティング&チョッパー的なプレイをアドリブ風に演奏してくれた。速弾きプレイではなく、与えられた条件下で最高にテクニカルなプレイをしてくれていたことが伝わってきた。弘法筆を選ばずだ。ポールはこの時のインタビューで「1日に100時間練習すべし」と冗談まじりに話していたが、本当にこの方はもの凄くたくさん練習をしているんだと思う。
    ④2009年 MUSIC JAPAN OVERSEAS
    二度目の幸運は2009年の年明けにやって来た。しばらく活動休止していた彼らが何とオリジナル・メンバーで再結成し、日本にやって来るという情報をウドーの担当氏が伝えてくれた。リッチー・コッツェンもいいけれど、MR. BIGはやっぱりポールだ。 10年ぶりのオリジナル・メンバーでの再結成の会見と最初のテレビ露出を日本と定めていると聞き、驚いたと同時にすごく嬉しく思った。 是非テレビ番組「MUSIC JAPAN」に出演を、とお願いをしたところ、トントン拍子に話が進み、スタジオで収録をすることが決まった。「せっかくなので、演奏曲をオファーしてみましょう」と担当氏に言っていただき、テレビ的には「To Be With You」かな、という思いもよぎらなかったでもないが、いや、やっぱり、ということで「Addicted To That Rush」でオファーをしてみたところ、バンドからの返答は「Daddy, Brother, Lover, Little Boy」を演奏したい、と。なるほど、そう来たか!リフやメロディのノリが強烈で、ソロはタッピングのユニゾンと正確無比な速弾き、そして何と言ってもその後にギター&ベースの「ドリル奏法」が続く。MR. BIGの魅力がいかんなく詰め込まれた名曲だ。
    2009年2月7日。MR. BIGのメンバー4人が来日。その夜、新宿ヒルトンホテルの会議室で打合せが行われた。我々NHKスタッフも会議に参加させていただいた。翌日の六本木ハードロック・カフェで行われる再結成記者会見やNHKでのTV収録の打合せが順に行われる。実はこの時、パットの肩の調子があまりよくなく、記者会見ではアコースティックで演奏することになっていた。我々の収録も、エレクトリックで演奏出来るかどうかの瀬戸際で、最終決断がこの会議まで持ち越されていたのだが、その場で「やる」と言ってもらえた。熱い思いをくんでくれたのかも知れない。収録で使用するドリルを持ち込んではおらず、日本で調達することになった。日本の製品なので自然ななりゆきだ。ポールがその場でドリル奏法用ドリルの作り方をメモ帳に絵に描いて説明してくれた。マキタ製電気ドリルの軸の先端に三角形のピックを3枚、穴を開けて固定する。3枚のピックの角度や固定法など分かるかどうか何度も尋ねながら、とにかく丁寧に説明をしていたのが印象的だった。
    そして迎えた2月9日。NHK101スタジオで再結成MR. BIGのTVパフォーマンス収録が行われた。楽器メーカーやアンプの輸入代理店の方々も今後の活動に備えて集合していたと記憶する。2回リハーサルをして本番。4人で戻ってきたバンドの姿とサウンドを贅沢にも目の当たりにし、感じたのは興奮と感慨だ。20代の頃、衝撃を与えてくれた彼らも、自分も同じように見た目はちょっぴり歳を重ねた。しかし、音と気持ちは何も変わらない。すごい演奏だ。40代になって再び彼らにやられてしまった。実に10年ぶりに4人で演奏しているはずなのに、ずっと演奏を続けてきたかのような完璧さと一体感。そこから出てくる何とも言えない高揚感、楽しさ。やはりMR. BIGはタダモノではない。実は本番のソロでビリーのドリルのピックが割れて飛び散ったのだが、そんなこと、本人は全く気にしていないようで、1発目がOKテイクとなった。完璧でありながら、スピード感あふれる演奏は、今アーカイブ映像を見返してみてもワクワクさせてくれる。あらためて、素晴らしいバンドだ。さらに別スタジオで司会の関根麻里さんとインタビューを収録。エリックは「ポールが戻ってきてくれて嬉しいよ」としみじみ話ていた。ポールは「駒込、四谷三丁目、仙川、千歳烏山に住んだことがある」というレア情報を語ってくれ、日本への愛情を表してくれた。帰りがけに「100%PAUL GILBERT買いました」と言うと、優しいポールがピックをくれた。特権を利用した形になってしまってファンの皆さまには大変に申し訳ないのですが、写真のピックがその時のモノです。大切な宝物だ。MR. BIGのメンバーは今後も私たちと一緒に歳を重ねていくだろうけども、変わらないサウンドを鳴らし続けてくれるだろう。いい音楽を、本当にありがとう!
    <プロフィール>
    是洞茂樹(これとうしげき)/NHK エンターテインメント番組部 チーフ・プロデューサー

    NHKの制作局エンターテインメント番組部のチーフ・プロデューサーとして「シブヤノオト」「NAOMIの部屋」「ミュージックライン」の各番組を担当。2009年、MR.BIGが再結成のアナウンス、それにともなうジャパン・ツアーのプロモーションで日本を訪れ、同局の「MUSIC JAPAN OVERSEAS」に出演した際の番組制作を担当。
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