MR.BIG/ミスター・ビッグ

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  • MR.BIG 来日記念 リレー連載(不定期)「MR.BIGと私」第二弾
    2017.07.19
    不定期連載「MR.BIGと私」、初回のTBS・川西さんに続きまして第二弾は通訳の中村美夏さんがご登場。中村さんはMR.BIGのデビュー時期から取材時の通訳を担当し、彼らがコンサート、アルバムのプロモーションなどで来日する際は必ず中村さんの姿が見られます。特に再結成後に日本でおこなわれたインタビューのほとんどは中村さんが通訳を担当しています。つまり、みなさんが見聞きしているバンドの声は中村さんを通じて発信されているわけです。そういう意味では、MR.BIGが日本で爆発的な人気を博しているのは中村さんの力によるところも大きいのかもしれないですね。
    今回の連載は、普段みなさんが目にするような雑誌のインタビュー・特集記事や、プロのライターさんが書くものとは異なる視点から捉えたバンドの姿を紹介したいと思っています。通訳という立場の方から語られるMR.BIGの姿はどういったものなのでしょうか?読んでいただくとMR.BIGのことがますます好きになるのではないでしょうか。特に、2011年4月の震災直後におこなわれたジャパン・ツアー時のエピソードには胸を打たれます。
    こんにちは。通訳の中村美夏です。
    いつもは裏方として働く身なので、このような表舞台に出るのはかなり気恥ずかしいのですが、せっかくMR.BIGについて語れるチャンスをいただきましたので、通訳の立場から見たり感じたりしてきたMR.BIGを少しだけ書いてみたいと思います。

    彼らと初めて会ったのはデビュー・アルバム『MR.BIG』の時でした。当時はあくまで取材通訳のひとりだったので来日時に数時間会う程度で、2枚目、3枚目と、ぐんぐん人気が上がっていく様を凄いな〜となかば客観的に眺めていました。
    その後ポールがバンドを離れソロに転向すると、ありがたいことに一緒に仕事する機会が増え、気がつけばチームPGの一員になっていました。『FLYING DOG』あたりからです。その後、何枚ものソロ・アルバム(プラスRACER Xの再結成)とプロモーション活動を通して酸いも甘いも共有しましたが、どんな時でも、どんな作品でも、インタヴュー最後の質問はほぼ決まって「MR.BIGのメンバーとは会いますか? 再結成の可能性は?」でした。通訳の私でさえ「またか」と思うくらいでしたが、ポールの反応は一貫して「再結成? ないよ、だから質問しても無駄」的な頑ななもので、そんな状態が何年も続いていました。だからこそあの2009年の再結成は、まさに青天の霹靂、一発逆転超特大ホームランで、「ポールさん、心変わりありがとーーー!」という素直な喜びでいっぱいでした(再結成はポールの気持ち次第であったことは周知の事実ですよね?)。本人は「久々にメンバーとジャムったら気持ちよかったからヤル気になった」と軽〜くいっていましたが…
    そして2011年の、震災直後のツアー。あのカオスの中本当によく日本に来てくれたと思いますが、ひとつ覚えているシーンがあります。中止になってもおかしくなかった盛岡公演の日、開演少し前に楽屋でエリックとすれ違いました。いつもなら、すれ違いざまに変顔したりイジッてきたりするお茶目な彼もさすがに緊張しているらしく、「余震が怖い?」ときくと、「いや、そうじゃないんだ。このあとステージに出ていくでしょう? そしたら、おそらくぽつぽつと空席があると思うんだ。そこにいるはずだった人は、被災して来られないかもしれないし、もしかしたらもうこの世にいないかもしれない、と思ったらちょっと重くなった。いつもは行き当たりばったりの僕だけど、MCで何をいうべきか、少し考えていた。今日はそういう人々に届くまで、いつも以上に頑張るよ」と。なんて情が深い人だろう、今日はきっと良いコンサートになると確信しました。もちろんその通りになりました。あの日、会場を包み込んだ感謝と感動は忘れません。
    そんなエリックを含め、各メンバーの印象は、今も昔もさほど変わっていません。エリックは愛すべきお調子者で、往々にして答えが長すぎて通訳泣かせ。しかもけっこう思いつきで喋るので話しがとっちらかることもあります。けれど、サービス精神は断トツで、そして純粋で、相手を想うあまり、あれもこれも説明したくなるのでしょう。バンドの道化師も担当しているので常に人を笑わせようとしますが、時々どこからが冗談かわからなくなるので、場合によっては話半分で聞くようにしています(笑)
    ビリーはいつでも理路整然と話すので、名指しの質問でないかぎり、多くの場合彼が口火を切ります。他のメンバーもそれをわかっているので、基本はビリーに任せ、あとで補足するといった流れが多いです。話術は最高。ただ、かなりアツい人なので、特に「今のミュージックシーンについて」のような質問が来ると異常な熱量で話し続けます(基本、打ち込み系の音楽が嫌い)。メモが追いつかないこともたびたび。
    そういうグダグダ系とヒートアップ系の間で、常に中立を保ち、バンドの理性でいてくれるのがパットです。彼がいることで、万が一脱線しても軌道修正され、取材はまとまります。そしてあの100万ドルの笑顔。本当にありがたい天使みたいな存在です。でもそんな彼でも2014年は本当に辛そうでした。病気を公表した後、LAで撮影された動画を見て愕然としました。明らかに我々がよく知る姿とは違っていたからです。あのパットが、嘘だろと思いましたが、あとから、あの時はまさにどん底状態にあったと知りました。そんな状態でも取材に出てきてくれたのは、それだけ責任感とバンド愛が強いのでしょう。その後プロモーション来日する頃には少し心の整理がついたのか、だいぶスッキリした表情をしていました。取材も、正直、拍子抜けするくらい順調に進み、パットからも「NG質問はないから何でもきいてくれ」といわれていたので、病気についてもオープンに正直に話してくれました。ただ、一度だけ、目の前で彼が壊れた瞬間がありました。ある記者が家族の支えについて質問した時。「妻と子供がいなかったら…」といいかけて、突然堰を切ったように泣き崩れたのです。エリックが一生懸命背中をさすっていました。どれだけ重いものを背負ったのだろう、計り知れないと思いました。私も取材陣ももらい泣きを堪えつつインタヴューを終えたのですが、「突然ゴメンね、でもいいスクープがとれただろ?」と茶目っ気たっぷりにいうパットを心から愛おしく思いました。
    そしてポール。一番長く知っていることもありますが、とてもわかりやすい。興味あることとないことの差がはっきりしています。もちろん取材時の答え方は丁寧で、的確で、好感度はとても高い。でもつまらない時はけっこうビジネスライクです。そういう時は通訳が何とか盛り上げます(笑)
    そして今、ニュー・アルバム『DEFYING GRAVITY』を語るポールはとても饒舌です。私も電話インタヴューさせていただきましたが、喋る、しゃべる! もちろんそれは彼が作品に満足している証しであり、気合いがビンビン伝わってきます。そして何より楽しそう。それは他のメンバーにもいえることで、作品の充実ぶりがわかります。2014年に、やむを得ず感じた5人目メンバーに対する違和感も、今は作り手も聴き手も完全にクリアして、逆に、マット・スターが持ち込んだ若さと新鮮さを楽しんでいる気がします。来年には結成30周年を迎えるバンドが、重力に逆らいながら、いまだに旬なアルバムを作れるなんて、素晴らしすぎます!
    9月の来日、みんなで盛り上げましょう!!
    <プロフィール>
    中村美夏(なかむらみか)/通訳・翻訳

    多くの海外ミュージシャンのインタビューや日本滞在時の通訳を務め、海外ミュージシャンの書籍の翻訳も手掛ける。
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