大阪ウドー音楽事務所

TEDESCHI TRUCKS BAND/テデスキ・トラックス・バンド

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  • TEDESCHI TRUCKS BAND デレク・トラックス 最新オフィシャルインタビューが公開!
    2023.09.02



    Q: 最新アルバム『I AM THE MOON』について、4枚に及ぶ大作となりました。これまでにないアプローチの作品ですが、その内容についてご自身の評価と、見聞きする評判はいかがでしょうか?

    D: あの4枚を製作した過程は、今振り返ってもとても楽しかったし、ライヴで演奏するのもすごく楽しいんだよ。あれはある意味、バンドを救ってくれたアルバムだった。コフィの死によって嫌でもバンドはリセットしなければならなくなり、その後、パンデミックがあって、再びバンドが集結した時はものすごくクリエイティヴな時間が戻ってきた。その間、いろんなことを振り返り、考察し、どんな方向に向かうべきかを話し合い、音楽のミューズの声に導かれるままに進んだところ、素晴らしい場所が待ち受けていた。そのことでバンドは再び元気を取り戻したんだ。『I AM THE MOON』からの曲はいまだに演奏していて、新鮮に感じられる。ものすごくしっくりとセットリストに収まっていて、まるでずっと昔からやってた曲のように感じられるほどさ。レコーディングは、それこそ永遠に続けられるんじゃないかと思えるくらい(笑)どんどん曲が書けて、出来上がっていったので「ここらへんでやめなきゃ」ってやめたくらいだ。次にスタジオに入る時にまた、あの時と同じ心の状態からスタートできればいいなと思ってるよ。どんな曲が書けるかによっては、全然違う方向に行くのかもしれないし、そこらへんはわからないけど、気持ちの部分であの感じをまた再現できればな…と思う。オーディエンスからの反応もすごくいいよ。大ヒットしたわけじゃないけど、バンドが一歩成熟する、いいターニングポイントになったアルバムだったね。 


    Q: 実際、コロナ以前と比べて何か変化はありますか?また、パンデミックによる影響はありましたか? 

    D: 唯一、ツラかったのは、コロナが起きた時、ちょうどバンドには追い風が吹いていたことだ。当然、その勢いは止まり、1年半〜2年間僕らは活動できなかった。そしてようやく演奏ができるようになった時には、たった5人で、駐車場で、ソシアルディスタンスを取りながらやるしかなくて、エネルギーは前とは全然違ってた。でも本格的にツアーが戻ってきてからは、ステージの上も客席もまたライヴができる喜びと感謝にあふれてて、次第にコロナ前の軌道に戻ることができていると思う。今はとても良いエネルギーが感じれられ、ここ数年のことがなんだか不思議なくらいだ。でもその時間があったからこそ、クリエイティヴになれたし、家の良さもわかった。自分を見直すいい機会という意味では、良かったんじゃないかな、より健全になれたから。


    Q:  公演ごとに変わるセットリストについて。いつどのタイミングで誰が決めるのですか?

    D: 僕はノートを持ち歩いてて、日頃から候補曲を書き加えてるんだ。で、たいていサウンドチェックのちょっと前に「今夜は何をやろうかな?」と考える。「この曲はしばらくやってないな」とか。そしてサウンドチェックで試し、いい感じだと思ったらセットリストに加える。当然、スー(※スーザン)にも「これをやりたい、これはやりたくない」という意見がある。僕らの楽屋には必ずリハーサルルームが用意されるので、そこで本番の1〜2時間前くらいに、準備をするのさ。これを毎日やってるよ。ツアマネのスキップが、たとえば東京だったらここ5年間の毎晩のセットリストを引っ張り出してくれるので、それを見て同じ曲がダブらないようにしたり、久しぶりの曲を入れたりする。あとは何かのアニバーサリーだったり、特別な日だったり…バンドのうちわ的なお祝いこともあれば、みんなが知ってるミュージシャンの誕生日だったり、アルバムが出た記念だったり。毎日、何を組み合わせるか、パズルみたいに楽しんで選んでる。セットリストを決めるのにかける意気込みだけは、大きい方だね、僕ら。


    Q: 来日するたびバンドメンバーたちとは、オン・オフの場面に限らず固い絆を感じさせます。ステージでの素晴らしいパフォーマンスにも影響はありますか?

    D: 大いに影響するよ。バンドがオフステージで良い状態の時はわかるんだ。ステージの上で、より自由になれる。元々僕らはお互いのファンなんだけど、全員の心の状態が良い時はやっぱりわかる。僕とスーの関係も一緒さ。うまく行っている時と、そうじゃない時ではやはり違いがある。なるべくいいステージにしようとはするけれど、日によって良い日もあれば、そうでない日もあるのは、僕らも、他のメンバーも一緒。逆に言えば、悪いことがあっても、それをステージに持ち込まないようにみんなしてて、ステージは唯一、安心できる場なんだ。音楽やオーディエンスや自分達のやっていることへのリスペクトがあるから、たとえそれまで気分が悪かったとしても、ステージに上がれば消えてしまう。終演後はみんなで食事に行ったり、そういうのが大好きだよ。ステージの上でしかメンバーと顔を合わせないっていうバンドはいくつも見てるし、むしろそれが普通だったりするけど、僕がいたバンドはそうじゃなかった。僕らは自宅でリハーサルをし、レコーディングし、一緒に生活し、経験をシェアする。そういうことすべてを含めての音楽だと思ってる。大好きだったバンドの多くが、最初の頃は良かったのに、年月が経つにつれ、有名になり、金持ちになり、みんなそれぞれに違う方向を向いて、相手のことなんかわからなくなって、顔を合わせるのはステージの上で音楽をやってる時だけっていうのは寂しいね。オールマン・ブラザーズは2〜3年ホテルの2部屋で暮らしてたから、ステージに立った時も話すことがいっぱいあった。僕らのバンドもそのエネルギーをなるべく持ち続けられるように頑張ってるよ。ま、スーと僕は一緒に暮らしてるから毎日顔を合わせるわけだけどね。バンドとも一緒に過ごす時間を持つようにしてるよ。


    Q: あなたが多くのインスピレーションを受けているであろうエリック・クラプトンについて。彼のバンド・メンバーとして2006年・日本武道館でのあなたの演奏にたくさんのオーディエンスが衝撃を受けました。あの時のことを覚えていますか?

    D:  武道館ではかなりの数の公演があったんだけど、そのうちのいつだったか…終演後、僕の友達がデレク&ザ・ドミノズのブートレグをくれたんだよ。すると初めて聴く、「Key To The Highway」のヴァージョンが入ってたんだ。それまで知ってたのよりもグルーヴがあるっていうのかな。そのことをエリックに話して聴かせたら、エリックもほとんど覚えてなくて「多分1回か2回くらいしかこのヴァージョンでは演奏してないはずだ」って言ってね。それをきっかけに、残りのツアーではそのヴァージョンでやるようになったことが忘れられない。僕がもらったブートレグがきっかけで、数日後にはそのヴァージョンでやったんだ! エリックは本当に日本を愛してて、日本もエリックを愛している。そんなエリックと日本に行けたのは本当によかった。日本のことをよく知っている彼と一緒にいられたおかげで、僕も日本を楽しめたし、エリックを通じて大勢の素晴らしい友人たちができて、今も付き合いが続いている。すごく重要なツアーだったよ。


    Q: そのエリック・クラプトンはあなたにとってどういう存在ですか?

    D:  ジェントルマンとしか言いようがないよ。僕にはずっと、本当に優しく接してくれてきた。間違いなく、彼のおかげで僕の人生は変わった。音楽という意味でも、それ以外の意味でも、まさに恩人。ずっと友人でい続けてくれたからね。この間、ジェフ・ベック・トリビュートで会った時も、最後に日本に行った時の話をしてたよ。どれだけ日本が好きかってことをね。彼にとって間違いなく特別な国なんだなって思う。エリックと会うと、いつも日本の話をしてるような気がする(笑)。いずれまた一緒に日本に行けたら最高だろうな。


    Q: エリックをはじめ、数多くのカバーを演奏していますが、今後カバーにトライしてみたいミュージシャンを挙げるとすればどなたですか?

    D: 何をやるかは、誰にもわからないよ。家ではいつもいろんな音楽を聴いてて、いいなと思う曲が流れると「これをやらなきゃ!」とスーと目配せしあってるんだ。フェイセズのカヴァー(「Stay With Me」)の時もそうだったし、「Beck’s Bolero」の時もそう。曲を聴いて「これをやったら絶対に楽しい」と思ったらやるというだけさ。これからもそういう曲は出てくると思う、間違いなく。


    Q: 10月のジャパン・ツアーの展望をお聞かせください。

    D:  僕ら、ツアーのスケジュールに日本があると聞くと、それだけで大興奮なんだ。メンバーからも「いつ日本に行けるんだ?」とずっと言われてきた。何名か、日本が初めてのメンバーもいるんで彼らは特に喜んでるよ。最後に日本でライヴをしてから随分と久しぶりになるし、その間に何枚もアルバムをリリースしているので、それらをライヴで演奏するのを楽しみにしてる。あと曲目も毎晩変えたいんで、旧譜からどれだけ引っ張り出してこれるか、それも楽しみだ。Mr. UDOとは2006年に初めて行った時以来の付き合いだし、ウドーのツアー担当を含め、いつもの、古い付き合いの友人たちとの再会を楽しみにしてる。何よりバンドが今、すごくいい状態でね。オーディエンスのために音楽を演奏することが楽しくて仕方がない、って感じなんだ。やってて楽しいよ。6〜7週間ぶっ通しの夏のツアーを終えたばかりで、毎日クレイジーな暑さだったんだけど、バンドの精神状態はものすごい良い。ツアーが終わるのが寂しかったくらいさ。そう思えるって、僕らがどれだけ良い状態かがわかるってもんだ。日本に行く頃には、準備万端で臨めると思うんで、楽しみにしてて。


    Q: ありがとうございました。



    訳:丸山京子


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