実に4年ぶりとなる歓喜の来日公演。
その貴重なジャパン・ツアーが、ここ福岡から幕を開けるというだけで現地TOTOファンにとっては記念すべき一夜。加えて博多では7/15(土)明朝に本番を迎える「博多祇園山笠」の「流舁き」(ながれがき:各区域内を山が舁き廻り町内の舁き山をお披露目する行事)が行われます。
メンバーのウォーレン・ハム(sax,etc)が健康上の理由により今回の来日公演には不参加となることが公演直前にアナウンスされ、残念な思いに駆られたものの、6人によるステージがファンの期待を裏切ることはないだろう、という不思議な確信を抱きながら会場に到着。
開演予定時刻を5分ほど過ぎた頃、客席が暗転してステージ左右から6人の勇姿が目に入ります。
ステージ中央に立ったスティーヴ・ルカサーの「What’s Up,フクオカ~!」の第一声からオープニングは「ORPHAN」(アルバム:TOTO XIV)。
まずは新生TOTOのラインナップである、ドミニク“エグゼヴィア”タプリン(key)、スティーヴ・マッジオラ(key)、ジョン・ピアース(b)、ロバート“スパット”シーライト(dr
)の4人を食い入るように凝視しながら、出音を確認。
オリジナル・メンバーがスティーヴ・ルカサーひとりになった新生TOTOを見聴きする目と耳は、往年のファンなら自然と厳しくなるもの。そんな少々意地悪な不安も、1コーラスが終わる頃にはどこかに吹き飛んでしまい、現メンバーの演奏とハーモニーの素晴らしさ=“TOTOらしさ”は、揺るぎないものであることを早々と痛感!もちろん、1986年からメンバーに加わったジョセフ・ウィリアムズ(vo)のハイトーン・ヴォーカルが聴ける喜びも!
「AFRAID OF LOVE」(アルバム:TOTO IV)、それに続いて早くも登場したキラー・チューン「HOLD THE LINE」(アルバム:TOTO)でわたしはもちろん、会場全体が彼らのライヴ・マジックの虜に。
ハード・ロックな「FALLING IN BETWEEN」(アルバム:同タイトル)を挟んでスティーヴ・ルカサーが「全ての美しい日本女性に」とひと言添えて曲は「I’LL BE OVER YOU」(アルバム:Fahrenheit)へ。個人的にTOTO全楽曲の中で一番好きな楽曲でスティーヴの甘い歌声とエモーショナルなギター・ソロをまたライヴで聴くことが出来て大満足。
その後も大胆なリ・アレンジが施された「GEORGY PORGY」(アルバム:TOTO)、「PAMERA」(アルバム:The Seventh One)などのヒット曲に交えて、「WHITE SISTER」(アルバム:Hydra)、「KINGDOM OF DESIRE」(アルバム:同タイトル)などのハードな楽曲で更なる演奏力の高さを思い知らせてくれる懐の深さは、各々が百戦錬磨のメンバーだからこそ成せる業。
新メンバーの面々はこれまでに様々なグループへの参加でその腕前を発揮してきた強者揃い。ジョン・ピアースはヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの2代目ベーシストでもあります。ドミニク・タプリンとロバート・シーライトの2人はゴースト・ノートというジャズ・ファンク・バンドのメンバー、スティーヴ・マッジオラは自身がリード・ヴォーカルを務めるバンドのリーダーでありながら、スティーヴ・ルカサーの最新ソロ・アルバムにも参加している多才なミュージシャン。4人が持ち得る高い演奏力は、かつてのオリジナル・メンバーやサポート・メンバーが奏でて来たものと比べても全く引けを取らず、音にうるさい往年のTOTOファンを思いっきりエンジョイさせています!!
その演奏力に加えてジョン(b)以外の全メンバーがほとんどの曲で重厚なハーモニーを聴かせるという驚異的なヴォーカル力。イーグルス、ドゥービー・ブラザーズと同様に、いつまでも変わらない美しいコーラス・ワークも新生TOTOの魅力のひとつであることは明らか。これからライヴをご覧になる方は是非その見事なコーラス・ワークにもご注目を!
終盤は、バンド最大のヒット曲である「ROSANNNA」~「AFRICA」(アルバム:TOTO IV)という至極の2曲。長くライヴでの“声出し“を禁じられてきたオーディエンスがうっぷんを晴らす大合唱でファンがバンドと一緒に主役になれる至福のひととき。
ここまでアッという間の本編で、充実・満足しかない高揚感であふれた感情をあらわにしながらオーディエンス全員が歓声と大きな拍手でメンバーを讃えます。
アンコールは近年のライヴで定番となっているザ・ビートルズの「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」。ゴスペル・アレンジが施された見事なカヴァー。歌詞の意味をかみして聴いていると、本当に教会で賛美歌を聴いているような感情が湧いてきて、文字通りゴスペル音楽による「精神の浄化」を感じながらライヴは終演の時を迎えます。
1978年のデビューから45年間。
TOTOの音楽が語り継がれ生き続けている奇跡(軌跡)。長い時を経て今もなお、彼らの音楽・演奏が新鮮な感動を与えてくれることがファンとしてこの上なく嬉しい!!
そして最後に、TOTOの全てを知る唯一のメンバーとなったスティーヴ・ルカサー。御年65歳にしていまだにずっと“上手くなり続けている”信じられないギタリストです。
今夜、福岡を皮切りにスタートした4年ぶりのジャパン・ツアー。この「感動」が、金沢、名古屋、大阪、広島、仙台、盛岡、そして東京の7都市を巡ります。
昨年から今年にかけて、往年のロック・アーティスト達が、再び遠く離れた日本の音楽ファンに届けてくれている何物にも代え難い音楽による感動の数々。2023年の7月は、日本中で感動を欲する音楽ファンの心を、TOTOが必ずや満たしてくれるはず!!
文:松田康宏