——待望のジャパン・ツアーまであと3ヶ月となった1月半ば、ドゥービー・ブラザーズの創立メンバーであり、文字どおりの中心的存在としてこのバンドを支えてきたトム・ジョンストンがリモート・インタビューに応じてくれた。
6年ぶりとなるこの回の来日公演は、ドゥービー・ブラザーズ結成50周年記念ツアーの一環として実現するものだが、まず、その「半世紀」という長い時間の重みについて彼はこう語っている。
半世紀って、なんというか、凄いよね。いろいろな人に「おめでとう」といわれて感謝したし、とにかく嬉しいよ。こうやって今もツアーをつづけていられる自分たちはとても恵まれていると思うし、そしてたくさんの人たちが観に来てくれるわけだから、とにかく、素晴らしいことだね。
もちろん、50年間、いいことばかりじゃなかった。僕もその一人だけど、誰かメンバーが辞めてしまえば、当然、バンドの音や方向性に影響が出る。でもそれは、クリエイティヴの仕事の分野では起こりうることでね、大切なプロセスでもあったのだと思うよ。
——ドゥービー・ブラザーズの前身は、1960年代後半、サンノゼ(サンフランシスコの南、約60キロ)周辺で活動をつづけていたトリオ、PUD。ブルースやリズム&ブルースを愛するギタリスト/ソングライター、トムを中心にしたパワフルなサウンドで地元のバイカーたちから人気を集めていたこのバンドに、1970年、フォークやカントリーにも精通したパットが加わり、彼らは、ドゥービー・ブラザーズとしてスタートラインに立っている。
パットはアコースティックな音楽をよく聴いていた。僕らの音楽性の違いみたいなことはよく指摘されるけれど、でも、それで「なにかを狙った」とか、そんなことじゃない。バンドの全体像なんてとらえてなかったし、ただメンバーが集まって、音楽をプレイすることを楽しんでいただけだよ。「有名になって、金を稼ごう」とか、そんなこともまったく考えていなかった。
——1971年発表のファースト・アルバムは不発に終わったものの、その後、ダブル・ドラムスの編成にパワーアップしたドゥービーズは、トムとパットの絶妙なギター・アンサンブル、かっちりとまとまったヴォーカル・ハーモニーを生かした独自の方向性を確立し、翌年の第2弾『トゥールーズ・ストリート』から「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」をシングル・チャート上位に送り込んでいる。そして73年春には第3弾『キャプテン・アンド・ミー』を発表。トムの書いた「ロング・トレイン・ランニン」と「チャイナ・グローヴ」が大ヒットを記録し、一気に、その人気と評価を高めたのだった。翌年には4作目『ドゥービー天国』からシングル・カットされたパット作の「ブラック・ウォーター」が初の全米1位を記録している。
しかしその後、トムも語っていたとおり、彼が体調を崩してツアー活動から離脱し、結局は脱退。この危機に対応するために急遽起用されたマイケル・マクドナルド(スティーリー・ダンの準メンバーとして活躍していた)を中心に、ソウル/ジャズ色の強い新たな方向性を打ち出し、78年発表の『ミニット・バイ・ミニット』でグラミー賞も獲得したのだった。
1982年にいったん解散したものの、トムとパットを中心に復活を遂げたドゥービーズは89年のアルバム『サイクルズ』で健在ぶりを示し、現在まで着実なペースでライヴ/創作活動をつづけてきた。そして、今回の50周年記念ツアーからマイケル・マクドナルドが正式に復帰し、日本でははじめて、トムと彼が並んでステージに立つドゥービーズ・ライヴが実現することになる。
マイケルに戻ってきてもらった理由は、50周年にということが大きかった。この半世紀のバンドの歩みを総括したものにしたいと考えていたからね。マイケルはもちろんその歴史を支えた男だし、彼がいるのは当然だと思ったのさ。今後のことはまだわからないけれど、もちろん、このラインナップは限定的なものという意味でもない。記念ツアーはまだまだつづくから、新しいアルバムとか、そういう話はこれからだね。
でもともかく、僕自身、今回のツアーをとっても楽しんでいるよ。セットリストに並ぶ曲はやっていて楽しいものばかりだ。マイケルの曲の比重が増えたことで、新しいフレイヴァーも加わった。日本のファンの皆さんも、きっと喜んでくれると思うよ。マイケルの調子も絶好調だし、彼のファンにも楽しんでもらえるはずだ。
——何度か空白期間はあったものの、ともかく半世紀にわたってトムを中心に歩みつづけてきたドゥービー・ブラザーズ。その絆、ブラザーフッドの支えてきたものはなんだったのだろう。
働きつづける、ということかな。『サイクルズ』で復活してから、我々は足を止めていない。そうやってバンドをつづけているかぎり、メンバー誰もがパワーを落とすことはない。ライヴでの演奏でも、曲づくりでもね。
——最後に、あらためてマイケルも加わったラインナップによる新作の可能性を聞いてみた。
ツアー中はステージに専念したいから、曲づくりも含めて、いろいろ決めるのは、それからだね。