RUFUS WAINWRIGHT/ルーファス・ウェインライト

ALL THESE POSES Anniversary Tour 2019

NEWS 最新情報

  • RUFUS WAINWRIGHT 最新インタビューが到着!
    2019.01.08
    3月28日(水)、29日(木)の2日間に渡ってデビュー20周年記念公演を行うルーファス・ウェインライト。
    11年ぶりのバンド編成で、1stアルバムの『ルーファス・ウェインライト』と2ndアルバム『ポーゼス』からの楽曲をパフォーマンスする必見の内容であるが、全米ツアー中の12月某日に本人にインタビューを実施することができた。

    気になる公演の見所や日本のファンに向けたメッセージは勿論のこと、先日リリースしたプロテスト・ソングに込めた思い、LGBTQアーティストを巡る環境の変化についてなど存分に語ってくれた。

    ——まずは今回のツアーを思い立ったきっかけ、殊に、最初の2枚のアルバムをセットにして聴かせようと思い立った経緯を教えて下さい。

    2枚を一緒に披露しようと思ったのは、僕にはこれらのアルバムが、対を成しているように感じられるからなんだ。ほら、デビューして最初の2枚のアルバムというのは、そのアーティストの運命を決定付けるような作品だよね。より具体的に言うと、まずファースト・アルバムには、何年もかけて自分の表現を磨いた挙句に綴った、渾身の曲が収められている。つまり、自分以外の人は一切関知していない、全く未知の音楽をいきなり世界に送り出すわけだから、ある意味でアーティストが主導権を握っていて、有利な立場にあるよね。僕の場合、まさにそうだったんだ。しかも非常に恵まれた環境で、大手レーベルのドリームワークスと契約し、オーケストラと、素晴らしいプロデューサーと、素晴らしいミュージシャンたちの手を借りて、素晴らしいスタジオでレコーディングを行なった。でもセカンド・アルバムは違う。ここで本当の試練が待ち受けている。セカンド・アルバムが1枚の作品として十分な重みを備えているか否か、ファースト・アルバムを聴いた人に発展的な音楽体験を与えられるか否か——というテストにパスしなければならない。僕は『ポーゼズ』でそれを実現できたと感じているし、これら2枚が僕のキャリアの核になってくれたと思うんだ。……いや、“核”と言うよりも、キャリアを軌道に乗せた“エンジン”だね。2枚を聴けば、僕がほかの人たちとは違う風変わりな試みを目論んでいることが、分かったはずだから。

    ——確かに当時のあなたは非常に風変わりな存在でしたが、その点は自分でも強く意識していたんですか?

    そうだね。自分はユニークだと認識していたし、デビュー当時を振り返ると自分でも驚愕することがあって、それは、当時の僕が備えていた途方もない自信なんだ。自分がユニークだと分かっていて、それでいて、世界は自分を必要としていて、僕が伝えようとしていることには重要な意味があると100%確信していた。ただ自分の運命を全うしているだけで、全世界が僕の歌を聴くべきだと。尋常じゃない野心があったんだ。当時そういう野心を持ち合わせていて良かったと思うし、今は逆に、そこまで野心に振り回されていないことに、ありがたみを感じているよ(笑)。僕の野心は理解されなくて、傲慢な人間だとか、自信過剰でエゴが強い人間だとか、批判されたこともあった。でも、音楽的に非常にユニークであるだけでなく、当時の音楽界でゲイであることを公言する数少ないアーティストのひとりだったわけで、あれくらい強気で自信があったからこそ、生き延びられたと思うんだよね。しかも僕は自分の人生を無防備に曲にさらけ出していたし、現実に、エイズに死ぬんじゃないかと恐れてもいた。色んな意味でサバイバルの知恵だったんだ。自信が功を奏したのさ。それにしても、あそこまでの激しさが自分にあったことに驚かされるよ。

    ——しばらくソロでのツアーが続いたあとで、久しぶりにバンドを率いてのパフォーマンスをするのはいかがですか?

    いい感じだよ。何しろ今回の僕には、ジェリー・レナードという素晴らしいミュージカル・ディレクターがいるからね。彼とは過去にも何度か組んでいるけど、デヴィッド・ボウイやスザンヌ・ヴェガとのコラボが有名で、音楽界では一目置かれている存在だし、バンドのメンバーも彼が中心になって集めてくれたんだ。だからほんと、最高だよ。これまで様々なメンバー構成のバンドとプレイしてきて、ここにきてようやく満足の行くコンビネーションに辿り着いた気がする。今のラインナップで作っている音楽には、すごく興奮させられるよ。それに、これらの曲は過去に繰り返しプレイしていて、僕も知り尽くしているだけに、非常に成熟してきたような感触があるんだよね。深みが増してきたと言うか。かつ、今の僕はこれらの曲を通じて何かを証明する必要もないわけで、純粋に音楽を楽しめるという点においてもエキサイティングだよ。

    ——セットは2部構成で、セカンド『ポーゼズ』のセクションはオリジナル盤をほぼそのまま再現していますが、ファーストのセクションでは順番を変えたり、曲を入れ替えたりしています。セットを構成する上での考えを教えて下さい。

    2枚のアルバムを1本のライヴ・パフォーマンスで再現するにあたって、単純に2枚ともそのまま演奏するのは、つまらないような気がしたんだ。それに長過ぎるようにも感じて、少し手を加えることに決めたのさ。だから、第1部は基本的に『ルーファス・ウェインライト』をプレイするんだけど、比較的新しい曲も含めて、アルバムに入っていない曲を幾つか交えている。実はライヴ会場でしか購入できないニュー・アルバムがあってね。『Northern Stars』というタイトルで、ジョニ・ミッチェルやニール・ヤングやレナード・コーエンといったカナダ人アーティストの曲をカヴァーしているんだ。その中からジョニの曲『青春の光と影(Both Sides, Now)』をライヴでは披露していて、最近リリースした『Sword of Damocles』も第1部で歌っているよ。両方とも宣伝しないといけないから(笑)。その後、第2部が『ポーゼズ』なんだけど、こちらは一転してよりフォーマルで、MCもほとんど挿まない。アルバムを1枚の絵画作品として提示しているような感じだね。あれはまさにそういう作品だから。そんなわけで、1本のライヴ・パフォーマンスの中で多様なアプローチを試みていて、そこは自分でも気に入っているよ。

    ——アンコールのラストソングは毎晩ザ・ビートルズの『アクロス・ザ・ユニバース』のカヴァーです。映画『アイ・アム・サム』のサントラで歌った曲ですが、なぜこの曲をラストに?

    理由のひとつは、ちょうど『ポーゼズ』と同じ時期にレコーディングした曲だからなんだけど、『アクロス・ザ・ユニバース』のすぐ前に歌うのは、『ゴーイング・トゥ・ア・タウン』なんだ。過去数年間のソロのライヴではたいてい、『ゴーイング・トゥ・ア・タウン』のあとは『ハレルヤ』という流れにしていて、どうもあの曲のあとには、より超自然的と言うか、幽玄なところがある曲が相応しいように感じるんだよね。『ゴーイング・トゥ・ア・タウン』は生臭いアメリカの政治に関する曲だから、宇宙全体に目を向けたスケール感のある曲を並べて、バランスをとっているのさ。

    ——セクションごとに着替えている衣装は、誰が手掛けたんですか?

    僕の友人であるカナダ人のファッション・キュレーター、ティエリー・マキシム・ロリオが監修してくれたんだ。このツアーのアーティスティック・ディレクターなんだよ。数年前に世界各地を巡回して話題になった、ジャン=ポール・ゴルチエの展覧会『The Fashion World of Jean Paul Gaultier: From the Sidewalk to the Catwalk』でキュレーターを務めた人でね。色んなデザイナーと組んで衣装を構成してくれたんだけど、主にヴィクター&ロルフの服で、一部ヴィヴィアン・ウェストウッドの息子(注:ジョゼフ・コー)に提供してもらったものも含まれているよ。

    ——ルーファス・ワールドの構成要素を網羅した成長の記録『ルーファス・ウェインライト』、ニューヨークで過ごした20代のダイアリーのような『ポーゼズ』、これら2枚のアルバムと改めて向き合って、どんな感慨を抱きましたか?

    実は想定していた以上に心理的なインパクトが大きくて、こんなはずじゃなかったのに……と、戸惑ってしまったよ(笑)。まずリハーサルを行なって、その時はただ楽しかったんだ。時代を遡って、曲によっては久しぶりに細かく聴き直したものもあったから、再考する作業には興奮させられたしね。ところがLAでツアーの初日を迎えた時、僕はものすごく感情的になってしまって、「初日だし、バンドと一緒にライヴをやるのも久しぶりだし、今LAで暮らしている僕にとって地元での公演だから、こんなに緊張して熱くなっているに違いない」と自分に言い聞かせたものさ。そうすることで気分が幾らか落ち着いて、それからアメリカ各地でプレイしているうちにだんだん慣れていって……。なのにニューヨーク公演の日を迎えると、またもや精神的にすっかり打ちのめされちゃったんだよ(笑)。というか、ライヴ自体は素晴らしかったんだ。でも僕はステージでずっと、何かを必死に探し求めている孤独な青年だったニューヨーク時代の自分の姿を、哀れなルーファス坊やが、色々あってセントラル・パークの中をとぼとぼ歩いている姿を頭に思い浮かべていて、それはもう強烈な一晩だったな。だからこうして過去のアルバムを辿るのは、間違いなく、非常にパワフルなプロセスだと言えるよ。

    ——あなたが触れたように、20年前、セクシュアリティを最初からオープンにしている男性アーティストは非常に稀でしたが、ここにきて当たり前のことになりましたよね。LGBTQアーティストを巡る環境の変化についてはどう感じていますか?

    う~ん、どれだけ変わったのか見極めるのは、すごく難しいと思うんだ。確かに一方では、ゲイであることを公言するのはいたってノーマルなことで、昔のようにそれで逆風が吹いたり、成功の妨げになったりはしなくなった。でもトランプ大統領が出現し、保守・右翼勢力や狂信的なクリスチャン勢力がこれまでになく大きな影響力を誇っている今、僕たちが勝ち取ったポジションは実は非常にあやふやなのかもしれない。だからこそ、油断しないで今後も可能な限り正直であり続けること、リアルであり続けることが重要だと思う。自分を隠さずに。昔の状況に逆戻りするのはいとも簡単なことだと思うし、残念ながら進化は止まってしまったような気がしないでもないよ。

    ——先程も名前が挙がった、11月のアメリカでの中間選挙に合わせて発表した新曲『Sword of Damocles』と、ブッシュ政権下の2007年に発表した『ゴーイング・トゥ・ア・タウン』、2曲のポリティカルな内容の曲も今回のセットに含まれています。あなたは『Sword of Damocles』を昨今の政情への“アーティスティックな返答”と評していますが、プロテスト・ソングの型にはまらないこういう曲に仕立てた狙いは?

    まずこの曲は、我々全員の頭上に“ダモクレスの剣”がぶら下がっているのだと説いているんだ。要するに、歴史の中で今我々は、政治的な意味でも、文化的な意味でも、環境問題においても岐路に立っているということだね。途方もなく大きな変革が必要とされていて、それは辛いプロセスに、恐らくバイオレントなプロセスになるだろうし、衝撃も大きいだろう。でも剣は落とされなければならないんだよ。従って、必ずしも直接トランプ大統領に宛てて書いた曲ではなくて、変化をもたらそうと呼びかけている曲なのさ。ほら、僕は前回の大統領選挙ではヒラリー・クリントン候補を支持して、彼女は結局負けてしまったわけだけど、「トランプのおかげで、これまでは表面的に取り繕っていて隠されていた人種差別や憎悪や性差別といった問題がさらけ出される結果になったんだから、それは良かったんじゃないかな」とは言いたくない。クリントン候補のほうが大統領に相応しかったことに変わりはないからね。とは言え、こういう現実を突き付けられている今、それに対処するよりほかに選択肢はないんだよ。
    (注:ダモクレスは、ギリシャ神話に登場するシラクサ市の王ディオニシウス1世の廷臣。彼がしきりにディオニシウスの栄華を褒めそやしたところ、王は自分の代わりにダモクレスを王座に座らせた。彼は王になった気分で悦に入っていたが、頭上を見上げると1本の髪の毛で吊るされた剣の切っ先が光っていて、栄華繁栄の中でも常に危険と隣り合わせなのだと諭したとされている。)

    ——トランプ政権になってからアメリカとカナダの比較論も盛んになりましたが、あなたの場合は両方の国のアイデンティティを併せ持っているわけですよね。

    ああ。すごくおかしいんだけど、実はカナダにもかつて、スティーヴン・ハーパーというとんでもない首相がいたんだ。僕はよりによって、アメリカはオバマ政権でカナダはハーパー政権だという時期に、カナダで暮らす羽目になった。だから、オバマ時代のアメリカではあまり長く過ごすことができなかったんだよ。そしてようやくアメリカに戻って来たと思ったら、トランプが大統領になった! だから、どちらの国でもいい時代を逃してしまった気がする。そんなわけで、僕がもしも日本に移住することになったら、気を付けたほうがいいと思うよ(笑)。

    ——ちなみに『ゴーイング・トゥ・ア・タウン』はイラク戦争を受けて誕生した曲でしたよね。その後ジョージ・マイケルがカヴァーし、2年前にはリリー・アレンがウィメンズ・マーチ(注:トランプ大統領の就任式翌日に世界中で行なわれた抗議デモ)に際して歌いました。そして、2019年の世界においても有効なのですが、このようにして曲が辿ってきた旅路についてどう思われますか?

    そりゃあ、僕の曲を素晴らしいアーティストたちが歌ってくれたことには大いにインスパイアされるし、感激もしたし、感謝の気持ちを抱いているよ。特にジョージはシンガーとして、僕の長年のヒーローのひとりだったから、本当に感動したな。そして今の世の中においても有効だという事実は、残念なことでもあるけど、僕はどうも物事のダークな側面に目を向けがちなんだよ。つい、心を困惑させる事柄について歌ってしまうのさ。

    ——10月には2作目のオペラ『Hadrian』も初演されました。あなた自身の手応えは?

    この作品については本当に大きな誇りを抱いているよ。トロントでの初演は大成功だったし、あちこちのオペラハウスが興味を示していて、まさに今、次にどこでどう見せるのか交渉を進めているところなんだ。何しろ大作だからね。全4幕で、主要な登場人物が13人もいる。物語も非常に重厚で深みがあると思うし、オーディエンスに挑みかけるようなところがある。ぜひとも正式にスタジオでレコーディングを行なって、アルバムにしたい。もちろん完璧な形になるまでには、恐らくこれから2年くらいを費やして、少しずつ手を加える必要がある。偉大なオペラ作品はどれもそういうものだし、とにかく今のところ、心から仕上がりには満足しているよ。

    ——今作は内容警告付きで18歳以上限定という、演出面でも型破りな作品のようですね。オペラの世界の常識を破りたいというような意図もあったのでしょうか?

    (笑)これは少々大げさな話で、カナダ人らしいリアクションだと思うよ。カナダ人はあれこれ細かいことを心配し過ぎるんだ。確かに、かなりセクシュアルなシーンがひとつあるけど、品位をもって表現されているし、実際は非常に美しくて、音楽的にもロマンティックなシーンなんだ。過激なことをして挑発しようという意図は全くないよ。ショッキングでも何でもないし、単にふたりの男性が愛し合っているというだけ。世の中では、そういうことも時たま起きるのさ(笑)。

    ——ポップ・アルバムは2012年発表の『アウト・オブ・ザ・ゲーム』以来途切れていますよね。ミッチェル・フルームと新作をレコーディングしていると報じられましたが、進行具合は?

    今まさに絶賛制作中だよ。ミッチェルは素晴らしいプロデューサーで、コラボレーションを心から楽しんでいる。僕とミッチェルの組み合わせは、まさに夢の取り合わせだよ。カリフォルニアという天国が引き合わせた運命のふたり、だね。いや、「地獄が引き合わせた」と言うべきかな。天国であり、同時に地獄でもあるのがカリフォルニアだから(笑)。

    ——もしかしてポリティカルな趣のアルバムになるのでしょうか?

    いいや、そうはならないと思うよ。むしろ、非常にパーソナルなアルバムになると思う。もちろん、怒りを多分に含むことになるだろうけどね。傷を負った種族として(笑)、僕たちみんなが共感できるような題材に触れてはいるけど、今の僕はそれよりも、人々の魂を癒すような曲を歌いたいんだ。

    ——思えば、デビューした年に2度来日しています。特に記憶に残っていることはありますか?

    覚えていることはたくさんあるけど、日本の社会そのものに驚嘆させられたと言うべきなんじゃないかな。視覚的な面もさることながら、食事から生活習慣に至るまで、何もかも含めて。あれ以来何度も訪れているけど、時間に余裕がある時は必ず歌舞伎を観に行っているんだ。能もぜひ一度観てみたいと思っていて、とにかく舞台芸術を鑑賞するのが好きなんだよ。

    ——3月の来日公演を楽しみにしているファンに、メッセージをお願いします。

    前回の来日から少し時間が空いてしまったから、まずは「ごめんなさい」と言っておきたい。みんなと再会できるのを楽しみにしているよ!

    訳:新谷洋子

  • RUFUS WAINWRIGHT 2ndアルバムの解説を掲載!
    2018.11.20
     前回の『ルーファス・ウェインライト』の解説に続いて、今回は『ポーゼス』の解説を掲載致します。3月の来日公演は『ルーファス・ウェインライト』と『ポーゼス』からの楽曲をパフォーマンスすることが決まっています。
     2つの解説を読んで来日公演に臨みましょう!

    『ポーゼス』(2001年)

    「興味深いキャラクターたちが大勢登場する戯曲みたいなもの」と、リリースに際して本作を形容していたルーファスだが、その戯曲の主人公が彼自身であることは間違いない。ファーストで少年期の自分を総括した彼はここにきてニューヨークに乗り込み、チェルシー・ホテルに長期にわたって逗留。部屋にピアノを持ち込み、自分の欲望に正直な若いシングル男性が新しい恋を、新しいスリルを探して都会を闊歩する、必ずしも健全とは言えない享楽的な日々を曲に綴った。そういう意味で、オープニングとエンディングに異なるヴァージョンで収められた、自嘲的ユーモア溢れる曲『シガレッツ・アンド・チョコレート・ミルク』は、当時の彼の自画像にほかならな い。この曲でちゃっかり先回りして許しを請うているセカンド・アルバムはつまり、なんでもトゥー・マッチなくらいやらないと気が済まない、放蕩息子の回顧録なのである。

    ラヴソングを歌うにしても、相手を崇拝し理想化する『グリーク・ソング』や『ザ・タワー・オブ・ラーニング』然り、塔に幽閉されたお姫さまになり切っている『レベル・プリンス』然り、今回はどれもファンタジーであることは明白だ。そして、同名のドキュメンタリー映画と『ベニスに死す』の世界を交錯させた『グレイ・ガーデンズ』から、中世ヨーロッパの宮殿を舞台に選んだかのような『ザ・コンソート』、タイトル通りにLAで繰り広げられる『カリフォルニア』に至るまで、ルーファスは時空を横断して冒険を続ける。

    そんな彼を、ファーストで活躍したピエール・マーチャンド、ロック畑のイーサン・ジョンズ、プロペラヘッズのアレックス・ギフォード、現代音楽のコンポーザーでもあるダミアン・レガシックといった具合に、様々なジャンルで活躍するプロデューサーたちがバックアップ。前作で打ち出したフォーク×クラシカル路線を踏襲しつつ、アレックスが関わった『シャドウズ』ではエレクトロニックなプログラミングを導入し、『カリフォルニア』ではいかにも西海岸ぽいロックを志向して、妹マーサらを交えて歌う父ラウドンの曲『ワン・マン・ガイ』では原曲のスタイルに則ってアコギ伴奏で歌うなど、より多彩で、かつ、曲によってはさらにエキセントリックなサ ウンドを掘り下げている。

    そして終盤、まさにエキセントリックな極と呼べる『イーヴィル・エンジェル』で放蕩生活のダークサイドを覗かせるルーファスは、『イン・ア・グレイヴヤード』で夢からふと醒めたかのようにリアリティと向き合う。アルバムは無事ハッピーエンドに終わるのだ。

    新谷洋子

  • RUFUS WAINWRIGHT デビュー・アルバムの解説を掲載!
    2018.11.16
     今回の来日公演でフィーチャーされるデビュー・アルバム『ルーファス・ウェインライト』と2ndアルバム『ポーゼス』の解説を音楽評論家の新谷洋子さんに書いて頂きました。
     まずは、1998年にリリースされた『ルーファス・ウェインライト』の解説を掲載致します。

    『ルーファス・ウェインライト』(1998年)

    2年を費やし、業界最高のミュージシャンたちを揃えて、50曲以上をレコーディング。オルタナティヴ・ロックのブームもひと段落した時期で、特に実績があるわけでもなく、非常に特異な美意識を備え、ゲイであることを公言する新人シンガー・ソングライターを、大手レーベルがサポートを惜しまずに送り出す――。今とは時代が違うとはいえ、ルーファスは破格に恵まれた状況下でデビューを果たしたと言えるが、それだけの価値があったことをこの傑作アルバムは雄弁に物語っている。

    その業界最高のミュージシャンたちとは、デモ制作の段階から関わったカナダ人プロデューサーのピエール・マーチャンド(サラ・マクラクランとのコラボで知られる)、ジョン・ブライオン、ヴァン・ダイク・パークス、ジム・ケルトナー、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのベンモント・テンチといった面々。ルーファスが弾くピアノと彼のバリトン・ヴォーカルを核にしながら、ヴァン・ダイクが腕を振るった優美なストリングスほか、クラシカルなアレンジメントを全編に施し、オペラをこよなくルーファスならではの、絢爛でシアトリカルなアウトサイダー・ワールドに辿り着いている。

    リリシストとしてもやはりシアトリカルな表現を好み、制作当時20代に突入したばかりだった彼は、16歳の時に母との複雑な関係について書いた『ビューティー・マーク』を筆頭に、10代の自分の体験を赤裸々に描く。『ミルブルック』ではニューヨーク郊外の全寮制高校で過ごした数年間を回想し、ヴェルディのオペラ『マクベス』から歌詞を引用した『バルセロナ』ではエイズと死の恐怖を語り、『フーリッシュ・ラヴ』『ダニー・ボーイ』『サリー・アン』の3曲では、不吉な予感を抱きながらものめりこまずにいられなかった、ひとりの男性への想いを吐露。一方、『イン・マイ・アームズ』と『ベイビー』は、ドラッグ中毒でのちに自殺してしまった、また別の恋人に宛てられ、リヴァー・フェニックスの死にインスパイアされた『マチネー・アイドル』は夭逝したスターたちに、『ダムド・レディーズ』はオペラのヒロインたちにそれぞれ捧げて、悲劇的・破滅的なシナリオに酔いしれるロマンティックな青年像を浮き彫りにする。結果的には、決して商業的に成功を収めたわけではなかったものの、その後のインディロックのシーンに大きな位置を占めることになるチェンバーポップを先取りするランドマーク的作品であり 、ルーファスの20年のキャリアの強固な礎がここにある。

    新谷洋子

  • RUFUS WAINWRIGHT ビデオ・メッセージが到着!
    2018.11.14

    ルーファス・ウェインライトからビデオ・メッセージが到着しました!

    11年振りにバンドを引き連れて『ルーファス・ウェインライト』と『ポーゼス』をパフォーマンスするデビュー20周年記念公演は現在先行予約を受付中です!

  • RUFUS WAINWRIGHT 最新動向&深く知るための手引きを掲載!
    2018.11.09
    常に多彩な音楽活動に勤しむルーファス・ウェインライト。
    音楽評論家の新谷洋子さんに、前回来日(2015年)以降から現在に至るまでのルーファスの動向をまとめてもらいました。

    さらに、前回来日時に掲載した同じく新谷さんによるルーファスをより深く知るための手引きも再掲載!
    2019年3月のデビュー20周年記念公演に向けて、ルーファスの全容を再確認する絶好のテキストとなっています。

    今後は『ルーファス・ウェインライト』、『ポーゼス』のアルバム解説も掲載予定です!

    ルーファス・ウェインライトがピアノとギターの弾き語りによるソロ・パフォーマンスを東京と大阪で行なったのは、2015年秋のこと。当時彼が立っていた場所を振り返ってみると、前年に初のベスト・アルバム『Vibrate: The Best of Rufus Wainwright』を送り出したルーファスは、同作の内容をラフになぞったライヴを披露するツアーをスタートし、その一環として来日が実現。ちょうど日本を訪れる直前に、2009年に上演した初のオペラ作品『Prima Donne』のスタジオ録音盤(演奏はBBC交響楽団)をクラシックの名門ドイツ・グラモフォンから発表しており、キャリアの最初の15年間を総括していたようなところがある。

    開けて2016年4月、7作目『アウト・オブ・ザ・ゲーム』以来4年ぶりとなるニュー・アルバムが届いた。引き続きドイツ・グラモフォンからリリースされたその『Take All My Loves:9 Shakespeare Sonnets』(日本盤未発売)は、ウィリアム・シェイクスピアのソネット(十四行詩)を歌詞に用いて楽曲にアレンジするというプロジェクトで、ルーファスは俳優の故キャリー・フィッシャーやヘレナ・ボナム・カーター、妹のマーサ、フローレンス・ウェルチといった豪華ゲストを迎え、アレンジャー兼ディレクターとしての才覚も発揮しながら、9つの曲をレコーディング。そもそも、演出家のロバート・ウィルソンの依頼を受けて舞台作品『Shakespeare’s Sonnets』(2009年)のために5編のソネットに曲をつけたのが発端で、シェイクスピアの没後400年を記念し、改めてフル・アルバムとして掘り下げたものだ。

    そしてフローレンスらを交えてアルバムを再現するコンサートをロンドンで行なったのち、6月には、初演から10周年を機に『Rufus Does Judy』をニューヨークとトロントで再演。ほかにもこの年は客演の機会が相次ぎ、マーサの『Goodnight City』(『Francis』のソングライティングを担当)やピンク・マティーニの『ジュ・ディ・ウイ!~ピンク・マティーニの素晴らしい世界』(『ブルー・ムーン』のヴォーカルを担当)、ロビー・ウィリアムスの『ザ・ヘヴィー・エンターテインメント・ショー』(『ホテル・クレイジー』のゲスト・ヴォーカルを担当)に参加。9月にニューヨークのラジオ・シティ・ミュージック・ホールで開かれた、トニー・ベネットの90歳の誕生日を祝うコンサートにも、レディー・ガガやダイアナ・クラールと共に出演し、『捧ぐるは愛のみ』を歌っている(ライヴ・アルバム『ザ・ベスト・イズ・イェット・トゥ・カム~トニー・ベネット90歳を祝う』に収録)。

    続く2017年は1年の大半をツアーに費やし、ドバイで初めて公演する一方で、秋に『Wainwright Libre!』なるユニークなイベントをハヴァナで敢行。かねてから度々キューバを訪れていた彼が、ファンと共に5日間をハヴァナで過ごし、現地のオーケストラと共演するコンサートやワークショップなどを行なって、キューバのカルチャーを楽しむという企画だ。そして今年に入ってからもツアーを続ける傍ら、カナディアン・オペラ・カンパニーとのコラボレーションで、2本目のオペラ作品『Hadrian』の準備を進め、いよいよ10月13日にトロントで初演の日を迎えた(トーマス・ハンプソンやカリタ・マッティラら世界的なオペラ・シンガーが出演)。若い頃にマルグリット・ユルスナール著の『ハドリアヌス帝の回想』を読んでからというもの、ずっとオペラ化する夢を暖めていたというこの作品の主人公は、ローマ帝国の第14代皇帝ハドリアヌス。恋人アンティノウスと彼の関係を核にしたストーリーは、同性愛者を巡る状況から中東紛争まで、近年の世界にも関連付けられるテーマを多分に含んでいるという。

    近年の世界と言えば、政治・社会的な活動にも引き続き精力的に取り組んでいる。母ケイトが設立したケイト・マクギャリグル財団(彼女の命を奪った肉腫の治療研究を支援)の活動をマーサと共に支えていることはご承知の通りだが、最近では、アートを通じて重病や障害を抱える人々を支援する団体The Art of Elysiumのために昨年提供した、スティーヴィー・ワンダーの『涙をとどけて』の美しいカヴァーも話題を集めたものだ。

    また、2016年のアメリカ大統領選挙では民主党のクリントン候補の応援活動に携わったルーファスは、トランプ大統領の就任後も様々な局面で、他のアーティストたちと同様に批判の声を上げてきた。そして2018年の中間選挙に向けて人々に投票を促すべく、さる10月19日、痛烈な政権批判を含んだ新曲『Sword of Damocles』を公開(“Sword of Damocles=ダモクレスの剣”とは、古代ギリシャ・シラクサの僭主の廷臣ダモクレスに因み、権力の座にある者の身に危険が迫っていることを仄めかす言葉)。ジョージ・W・ブッシュ政権に宛てた『ゴーイング・トゥ・ア・タウン』(2007年)に次ぐこのルーファス流プロテスト・ソングは、俳優のダレン・クリスが出演するビデオクリップ共々、大きな注目を浴びている。

    そんな彼は目下、ミッチェル・フルームのプロデュースによるニュー・アルバムを制作中だと報じられているが、その完成を待たずに、11月9日からまた長期のツアーに突入。来年5月末まで続く、“All These Poses Anniversary Tour”と題された今回のツアーでは、ちょうど20年前に発表したファースト・アルバム『ルーファス・ウェインライト』とセカンド・アルバム『ポーゼス』(2001年)の収録曲を、バンド編成でプレイする予定だ。北米とオセアニア各地を回ったのちに日本にやって来るルーファスは、きっとたくさんの思い出話を織り交ぜながら、懐かしい曲の数々を聴かせてくれるのだろう。

    新谷洋子

  • RUFUS WAINWRIGHT 11年振りのバンド編成!デビュー20周年特別記念公演が決定!
    2018.11.05
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