JACKSON BROWNE/ジャクソン・ブラウン

【来日予定メンバー】
ボブ・グラウブ(ベース)、グレッグ・リーズ(ペダル/ラップ・スティール&ギター)、マウリシオ・リワーク(ドラムス)、ヴァル・マッカラム(ギター)、アリシア・ミルズ(コーラス)、シャヴォンヌ・スチュワート(コーラス)、ジェフ・ヤング(キーボード)

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  • JACKSON BROWNE 2年半ぶりのジャパン・ツアーが遂にスタート。
    2017.10.18

    2年半ぶりの来日を果たしたジャクソン・ブラウン。今回のツアーに合わせて特別に日本でのみ、前回15年に収録されたライヴ・アルバム「ザ・ロード・イースト~ライヴ・イン・ジャパン」を発表したように、ジャクソン自身も「日本の皆さんは本当に僕らに良くしてくれる」ので「日本公演を心から楽しんでいる」と語る。特に今回は新曲集のニュー・アルバムを携えてのツアーではないので、「やりたい曲が本当にたくさんある。何だって起こりうるよ! たくさんの曲が聞けるはずだ」と、来日前に本人が予告していた通り、初日から驚きに満ちた『何だって起こりうる」(〈エニシング・キャン・ハプン〉)コンサートとなった。

    まずはオープニングの曲を予想し合ったファンも多いと思うが、なんと演奏されたのは、トム・ぺティ&ザ・ハートブレイカーズの81年のヒット曲〈ザ・ウェイティング〉。今月2日に急死したトム・ペティへの追悼で、この日のショウ自体がトムとハートブレイカーズに捧げられた。ハートブレイカーズには90年代のジャクソンのバンドの要だったスコット・サーストンがいるし、01年には一緒に全米ツアーを行った関係である。実のところ、ジャクソンは今年2月の「ミュージケア」財団のトム・ペティ・トリビュート・コンサートに出演した際に、この曲を歌っていた。今日は歌いだしこそちょっとトチってしまったが、グレッグ・リースの弾くリッケンバッカーの12弦エレキをフィーチャーしての演奏は彼らへの敬意がたっぷり感じられる素晴らしいものだった。

    2曲目の前の挨拶で「今日は長らく演奏していなかった曲もやるよ」と言った通り、さっそく次に歌われたのは、95年の「ルッキング・イースト」からの〈サム・ブリッジズ〉。このような近年あまり演奏されなくなった曲が定番曲の間に挟まるところも、今回のツアーの聴きどころとなる。第2部では、02年のアルバムの表題曲〈ネイキッド・ライド・ホーム〉を久々に聞いたが、グレッグの12弦とヴァル・マッカラムのテレキャスターでのトワンギーなソロをフィーチャーして、今のバンドならではのサウンドとなっていた。また、08年の「時の征者」からの〈ジャスト・セイ・イエ〉を歌う前には、「僕のコンサートにハッピーな曲を聴きに来たわけじゃないだろうけど」なんて軽口を叩く場面もあった。

    ジャクソンは現在のバンドをしばしば「これまででも最高のバンド」「歴代のバンドの中でも一番のお気に入りのバンド」と形容する。15年の来日と同じ顔ぶれのバンドは全員が腕利きぞろいだが、何といってもヴァル・マッカラムとグレッグ・リースという2人の強力なギタリストの存在をとりわけ自慢にしており、彼らのソロが全編でたっぷりフィーチャーされる。ギター類なら何でもこなす名手グレッグが多くの曲で弾くラップ・スティール、ヴァルのテレキャスターからファイアバードまでのギター、両者ともそのギターの音自体が素晴らしく輝いており、初日からその演奏は全開だった。〈ルッキング・イースト〉でのソロの掛け合いがスリリングな一方で、〈ロング・ウェイ・アラウンド〉のような曲では、ヴァルのエレキのソロの背後でアコギに持ち替えたグレッグが繊細なバッキングを聞かせるなど、2人のコンビネーションがまた見事だ。「あの2人は一緒に演奏するのを本当に楽しんでいる」とジャクソンは言っていたが、彼らの演奏を誰よりも楽しんでいるのは舞台上の特等席で見ている彼自身に違いない。

    毎度おなじみの光景だが、客席からたくさんのリクエストの声が飛び交い、ジャクソンはそれに応える。イヤフォン・モニターをしているため、お客さんの声が聞き取りにくいようで、聞き返す場面も何度もあったが、いったん次の曲のために手にしたギターをまた取り換えるなどして、今晩もロウエル・ジョージ、ヴァレリー・カーターとの共作〈ラヴ・ニーズ・ア・ハート〉やウォーレン・ジヴォンの〈ロイヤー、ガンズ・アンド・マネー〉など、ファン感涙の5曲を演奏した。その際に2度ほど同じことを言った。直訳すると「この曲は十分には頻繁にやっていないんだ」と。この「十分には」は「やりたいと思うほど」という意味だと思う。彼が好んでリクエストを受けるのは、サーヴィス精神と同じくらいに、あまりやらない曲をやってみる良い機会と考えているからなのだ。

    名作「レイト・フォー・ザ・スカイ」からの〈ファーザー・オン〉では、「演奏すれば思い出すだろう」などと言って始めたし、メンバーに確認しなければならないリクエスト曲もあったが、それでも、このバンドは問題なくこなす。それもそのはず、ドラムズのモウリシオ・ルウォックとキーボードとヴォーカルのジェフリー・ヤングはバンド在籍24年目となるし、ベースのボブ・グラウブは80年代にずっとバンドにいた人で、バンド加入前にも「プリテンダー」のセッションに加わっていた古い友だちとジャクソンに紹介されていた。 今晩のセットリスト全22曲は、意外にも14年の「スタンディング・イン・ブリーチ」から1曲のみで、オリジナル・アルバム14枚の内11枚から演奏されるという、キャリア全体からまんべんなく曲が選ばれたものとなっていた。前回のように全体の構成に何らかのテーマを持たせたものではないようだ。ライヴ・アルバムの選曲にあたって用いた「演奏するのがすごく興味深いとわかった曲」「ライヴ・ショウでとても人気のある曲」といった基準が、今回のツアーの選曲でも用いられているのだと思う。

    また、政治社会的な曲は、バック・ヴォーカルのシャヴォンヌ・ステュワートとアリシア・ミルズをフィーチャーして曲が大きく生まれ変わった〈ライヴ・イン・ザ・バランス〉と〈ルッキング・イースト〉くらいと意外に少なかったが、近年ずっとオープニングを飾っていた〈バリケード・オブ・ヘヴン〉から、おなじみ〈プリテンダー〉や〈孤独なランナー〉などが歌われた終盤に、自分とその世代の歩んだ道程という彼の根本的な主題が凝縮されていたと言っていい。今日の観客席の多くを占めていたジャクソンの音楽と共に人生を歩んできた世代の方々はどのような感慨を持って、これらの曲を一緒に歌っているのだろうと思わずにはいられなかった。

    「65年僕は17歳で・・・」と歌われる〈孤独なランナー〉の途中で、「17歳だった僕ももう69歳だよ」と、今月9日に誕生日を迎えたばかりのジャクソンは言った。確かに髪の毛に白髪も見え始め、演奏中も眼鏡をかけっぱなしだが、その体形は変わらないし、声域もほとんど同じのようだ。そして何よりも、休憩を挟むにせよ、実演時間が約2時間半(終演は10時)という長時間コンサートをこなすタフさを保っているのには敬服させられた。

    今回の「何だって起こりうる」ツアーを本人もとても楽しんでいるようだ。〈孤独なランナー〉のイントロで観客の手拍子に合わせて体を動かす姿など、これまで見たことのないご機嫌ぶりだった。大満足の初日だったが、2日目以降はさらにもっといろんな曲が聞けそうだ。

    (TEXT:五十嵐 正)

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